ベッドライト代わりにデスクライトを付けた部屋は作りのせいかエアコンがついているのに少し寒かった。 薄暗い部屋の入口には帰省帰りの荷物がそのまま置かれ、二段ベッドの下の段で沢村栄純は弾んだ様子で自分の服に手をかけ、脱ごうとしていた。 「倉持がまだ戻らねーからって」 その横で、既に上半身裸でベッドに入っていた御幸一也が浮かれる後輩を笑って見つめる。 脱いだ上着をベッドの下に落とし、栄純は嬉しげに同じ布団に潜り込んだ。寮のベッドは男二人では少し窮屈だ。 「降谷もまだ北海道だし。早く帰ってきて良かったぜ」 「大晦日に帰ってきてどーすんだよ。正月休みの意味ねーだろ」 「でも御幸先輩が居るってゆーし」 子供のように身を縮めて同じ布団に潜る。目があって、クスクスと笑うと…そっと口づけた。 「今日は俺の相手、してくれるよな?」 「他に誰も居ねーしな。お前のバカみたいに積極的なとこ嫌いじゃねーわ」 胸の前に置かれた手を重ねるように握ると、手を開かせ指を絡める。 投手向きと言われた長く柔らかい指を口元に引き寄せるとその中指を吸う。 くすぐったさに震える肩を抱き寄せのしかかるように体勢を入れ替えると、見つめ合い、深く口づける。 「ベッドの中で男に抱かれて、なんて、不健全な年越しだな」 「そーかもしんねーけど…すっげー嬉しくて、ドキドキする」 恥ずかしそうに、だがハッキリと言って真っ直ぐに見つめてくる栄純に、御幸は思わず吹き出しそうになる。こんなにも純粋に好意を示され、悪い気はしなかった。 その想いにこんな不埒な形で応えている事と、それを受け入れられていると純粋に喜ぶ栄純の単純さ加減に少し意地悪をしている気分にもなる。 「お、日付変わった」 枕元に置いてあった携帯を横目で見て御幸が言う。 「あけましておめでとうございますッス、御幸先輩」 組み敷かれ頬を染めたまま栄純が笑う。 「ああ、おめでとう」 新年の清々しい瞬間をこんな姿勢で迎えている事に悪戯めいた後ろめたさと嬉しさのようなものを感じつつ、しばし見つめ合う。暖かくなり始めた体が寒い新春の夜に心地好い。触れ合う肌や絡めた指、狭いベッドの中での距離感が本当に恋人同士らしくて、嬉しさと恥ずかしさでくすぐったいように笑う。 「じゃ早速…姫初めとするか」 「姫初め…?んっ…」 両手を絡めたまま上から覆いかぶさるように深く口づけされて、栄純は姫初めの意味は判らなかったがなんとなく察して目を閉じた。 口内をまさぐる舌に自分の舌も併せるように絡めれば、「ん…ん…」というくぐもった喘ぎと唾液が口の端から零れる。 「御幸せんぱ…ぃ…」 唇から頬に、耳に、首筋にと口づけを落とすと、解放された栄純の手が御幸の髪にかかる。 鎖骨を吸いながら膨らみのない少年らしい胸を手で辿ると、つつくように尖りに触れた。 「ぁ…!」 「ここ、感じやすいのな」 「だって…そんなとこ…ぅあ…!」 熱い息がかかったかと思うと、指で弄られ僅かに勃起した胸の尖りを熱く湿った感覚が包む。軽く唇で吸うと、円を描くように舌先でなぞられ、栄純は髪を乱してのけ反る。 「みゆ…き…ぃ…っっ」 「先輩な?」 「は…ぁ……御幸…せんぱ…い…俺も…したい…」 栄純の手が押し止めるように御幸の肩にかかった。御幸が少し笑って体を離しベッドの上に座ると、栄純も身を起こし、向き合って座る。 熱に潤んだ目のまま押し付けるように口づけながら、御幸のズボンに手をかける。柔軟な女性めいた動きで下着までずらすと、体を沈め、僅かに熱を保ち始めていたそこに唇を寄せた。 「新年早々積極的だな」 「俺も、御幸先輩の事…気持ち良くしたいから」 起き上がらせるように指を絡め、上下に擦ると、躊躇う事もなく先端に口づけ、ゆっくりと飲み込んでいく。 舌を絡め、唾液で滑らせるように頭ごと上下に動かして吸いあげると、固さを増したそこに押し付けるように御幸の手が栄純の髪を撫でる。 「…ん…ぷは……御幸先輩…好き…っ…」 「何処に言ってんだ、お前」 「好きじゃないと、こんな事出来ねぇから……」 潤んだ瞳のまま、手を離しても形を保つようになった雄に口づけ、濡れた舌を絡める。 「コレ…すっげぇ好き…」 「好きって、舐めるのがか?」 意地悪く笑いながら栄純の髪と、頬を撫でる。無意識にも艶めいた動作で長い指を絡めながらもう一度先端から唇に埋め、口の奥で柔らかく噛む。 教えられた訳でもないが、奉仕したい一心で試行錯誤する積極的な動作は無垢さも感じさせ、雄を熱くするには十分だった。 「…沢村…」 合図をするように栄純の頭を両手で抑え、ゆっくりと引き抜く。 口とソコを繋ぐ唾液の糸もそのままに栄純の体を横向きで寝かせると、ぐっとズボンと下着を引き下ろした。 栄純の雄が既に上を向いて露出する。はぁはぁと息を乱しながら蕩けた瞳で見つめると、御幸が片足を抱え上げ体を割り込ませて来る…そして十分に固くなった雄を、栄純の最奥のすぼまりに押し付けた。 「上手に舐められたからな…ご褒美だ」 「あ…あ…御幸…せんぱ…ぃ…」 圧迫感が強くなるのに合わせ栄純の手がシーツを辿るように握り込む。 「はぁ…っ…はぁ…ッ、ん、あ、ああっ、ああああッ!!!!」 押し入ってきた熱に、肩がふるえシーツに縋る指に力が篭る。圧迫感に一旦呼吸を整えると、御幸は栄純の片足を抱え上げたままぐいぐいと奥へ自身を押し進めた。その度に栄純の体が大きく揺れ、熱く粗い息に喘ぎが混ざる。 新春の寒さを感じさせない程に互いに上気した体は、汗で重なる部分が吸い付くようだった。 「み…ゆき…せんぱ…ぁい…!!!お、奥、奥、に、入って、はぁあ、熱いのが入って、えぇ…!!!」 「沢村…ははっ…お前、腰揺れてんじゃん…そんなにイイのか?」 「ん、ひぅっ…!!!」 結合部を密着させ、熱い呼吸に合わせながら動かし、体を折って唇を合わせる。荒い動きに翻弄されるような覚束ないキスは唾液を零し、喘ぎを漏らしながら互いの唇と舌を貪りあう。 「ぃ…ひっ…いぃぃ…っっ!!!」 栄純の片足を抱え込んでいない方の腕が上下する薄い胸を辿り先端を指先で転がすと、目をギュッと詰むって悲鳴じみた声を上げた。 その間も中を掻き回し止まらない腰に縋るように栄純の腰が動き、当たりに複雑さを加え快楽を産む。 それも御幸を求めすぎるうちに無意識に覚えた事だが、挿れている御幸にも揺らめく腰の淫靡さと不規則な締め付けが心地好い。 「エっロい腰つき…気持ちいいぜ?…栄純。」 「は…ああぁ…、ほ、ホントに…??」 御幸は高まってくると艶を含んだ低い声で下の名前を呼ぶ…そうすると栄純の全身がゾクゾクと甘い痺れに包まれた。 腰が、肩が、背筋が甘く痺れ、心から感じてしまう。 「御幸……一也…せんぱ…い……ん、はぁっ、ああ、はぁあ…!!!す、好き……ぃ、うぅん…」 「栄純…」 柔軟な体を捩って求めて来るキスに応えながら、先端が腹の中の特に感じる部分を突くように動き、栄純の腰も自らそこを当てるようにうごめく。 触れられてもいないのに栄純の雄は熱く熱を持ち、唾液のようにはしたなく先走りを零している。 「このまま、後ろと乳首だけでイっちまえよ…!」 「あ、あ、そん…な…!!!ぃ、ぃく、自分のチ○ポ触らなく、ても、ひぁあああっ!!!奥、だけ、御幸先輩のだけでイっちま、あぁあ、っああああ!!!イク、イク、イ…っっ…ク…ぅうう…ううううう!!!」 強く目を閉じ、滲んでいた涙が頬にこぼれた。引き攣ったように背を弓なりにそらせ、頭の中を白くスパークさせながら撒き散らすように白濁を放つ。 御幸も眉を歪めながら目を閉じ、栄純の片足を抱え込んだまま最奥にドクン…ドクン…と注ぎこんでいく。 「あ…あー……あー…」 絶頂の引き攣りに酔っていた体が、徐々に弛緩し、余韻の痙攣を始める…大きく息をつくと、御幸は栄純の中から弛緩した自身を抜き出し、また始める前のように栄純の前に向き合って横になった。 「今年も早々、良かったぜ、沢村。お前野球はともかくセックスは本当才能あるわ」 「や、野球はともかくはいらねーけど……御幸先輩が良かったなら…良かった……俺もすっげぇ良かったし…」 もじもじと頬を真っ赤に染めながら…しかしまっすぐ見つめながら栄純は言った。 「今年も一杯球受けてくれたり、一緒に試合出たりしてくれるんだろ?」 「そりゃお前次第だけどな。」 意地悪く御幸が笑う。少しムキになったように眉を寄せた栄純だったが、そのまま伸びをするネコのように唇を合わせる。 「今年は去年より頑張ってやるから。去年より、降谷より!」 「そりゃ楽しみだ。頑張って俺を惚れさせてみな」 強気なキスに応えながら、御幸は自らの胸に抱え込むように栄純の頭を抱き込んだ。 ようやく感じ始めてきた新春の夜の澄んだ空気。体中に残る暖かい残滓と込み上げてくる心からの幸福感に、今年はもっと何度もこの感覚に酔えるようどんな努力でもしようと心から誓う栄純だった。 「朝になったら、練習始める前に初詣行きましょーよ」 「ああ、いいぜ。」 暖かい腕の中で目を閉じながら、栄純は嬉しそうに笑った。 もっと、もっと。今年は去年よりもっと、この人に愛される自分になれますように。 |