細く長く息を吐き出した沢村栄純に、滝川クリス優が厳しい顔を穏やかにほぐして声をかけた。
「このあたりで、終わりにしようか」
 はっとした沢村が、拳をにぎり足を開いて大声を出した。
「俺、まだやれます!」
 気合十分の沢村に、クリスは穏やかな目を細めた。
「休むのも、大切な練習のうちだと言っただろう」
「でも」
 不満そうに唸る沢村に、仕方がないなと息を吐き、クリスは手招いた。沢村は練習を続けてもらえるのかと、期待をしながらクリスに近付く。
「元気が、ありあまっているようだな」
「うっ」
 近付いた沢村は、おもむろに股間を握られ息を詰めた。
「っ、な、ななななな……く、クリス先輩っ?!」
 声をひっくり返した沢村に、軽く笑ったクリスは手の中のものを、探るように揉んだ。
「少し、ヌいておくか」
「うぇあっ?! な、何を言ってんスか、クリス先輩。わわ、ちょっと」
 うろたえる沢村を無視し、クリスは彼のベルトを外しファスナーをおろして、手を入れた。
「クリスせんぱ……っ」
 沢村の陰茎を取り出したクリスは、ためらうことなく口をつけた。
 彫の深い、目鼻の整っている大人びたクリスの顔が、陰茎をしゃぶることで歪んでいる。見下ろす沢村は、たぎる股間と皮膚を突き破りそうなほどに脈打つ心臓に意識を奪われ、この状況がどういうことかを考える余裕が無い。顔どころか、体中を赤くしてうろたえている沢村に、クリスはいつもと変わらぬ微笑を浮かべ、舌の上に陰茎を乗せ、上あごと挟んで擦りながら吸った。
「ふぁ、あっ、クリス先輩……ふ、ぁ、ああ」
 ぬめぬめと温かな口腔に、沢村の陰茎は脳まで突き抜けるような快楽を浮かべ、肌身を震わせる。膝をわななかせる沢村の尻をつかみ、クリスは丹念に陰茎をしゃぶった。その様子を、沢村は目を離すことができずに眺めてしまう。
「ふっ、ぁ、ぁあっ、は、ぁ」
 体を支えるためか、違う意図があったのか。沢村はクリスの頭に手を置いて、髪に指を絡ませた。
「んはっ、ぁ、ああ、クリスせんぱ、ぁ」
 沢村の目が潤んでいる。彼の表情の変化を見ながら行為をしていたクリスは、ひそめられた眉に口を開いた。
「どうした、沢村。そろそろイキたいんだろう?」
 クリスの口内には、沢村の先走りがたっぷりと含まれていた。つやつやと濡れたクリスの唇に、自分の怒張した陰茎が乗っている。少し湿ったクリスの瞳が包むような優しさをたたえて光り、沢村はゴクリと喉を鳴らした。
「こんな、だって……」
 言いよどむ沢村を、視線で促す。
「誰か来るかもしんないし、それに、その」
「気持ちよくないか?」
 ぶんぶんと、沢村は激しく首を振った。
「すっげぇ、気持ちいいっすけど」
「じゃあ、なんだ。ガマンをする必要なんて、無いんだぞ。沢村」
 クリスの髪が、沢村の指で乱れている。性的な興奮の無いクリスの顔に突きつけられている、性欲まるだしの陰茎。その対比に、沢村は胴震いした。
「だって、このままじゃ、俺……クリス先輩の口の中に」
 きゅっと唇を結んだ沢村に、そんなことかとクリスは息を吐いた。
「気にするな」
「気にしますよ! こんな……こんなのって」
 ちらりと沢村は入り口に目を向けた。日の暮れた体育館。他の野球部員は皆、寮にいることだろう。練習をするにしても、グラウンドに行くはずだ。集中して特訓をするには、丁度いい。そう、クリスは言った。だが、誰かが覗きに来るかもしれない。それに――。
「クリス先輩に呑ませるなんて」
 拳を握り、ぎゅっと目を閉じた沢村に、好感を乗せた息を吐いたクリスは舌を伸ばして陰茎をくすぐった。
「っ、だから――ぁ、あぁ」
 口内に陰茎を引き入れてしまえば、沢村は快楽に支配される。彼の躊躇いなど吸い尽くしてしまうように、クリスは陰茎を愛撫した。
「はっ、ぁ、あっ、だめですっ、ぁ、クリス先輩、ぁ、ふ、ぅあ」
 必死に射精欲と理性を戦わせていた沢村だが、経験の浅い――他人に触れられた事の無い箇所への刺激と目の前の光景に、若い性が抗えるはずも無かった。
「っは、ぁあああ!」
 ぶるっと腰を震わせて、沢村が放つ。吹き出したそれでむせぬよう、舌で受け止めたクリスは筒内のものも吸い上げてから、顔を離した。
「は、ぁ……」
 がくりと膝を着いた沢村が、ぼんやりとクリスを見上げる。目に入ったクリスの喉仏が上下するのを見て、息を呑んだ。
「く、クリス先輩」
「ん?」
「い、今……俺の、の、のん、のっ」
 あわあわとうろたえた沢村が、がばりと土下座する。
「すんませんっしたぁ!」
「はは――何を謝ることがある、沢村。これは、俺のしかけたことだ」
「でもっ、でも」
「寮生活では、処理もままならないだろう。プライベートは、在って無きが如し、だからな」
「それは、そうですけど」
 ごにょごにょと言った沢村が、そうだと思いつき、クリスの膝に飛びついた。
「なら、クリス先輩もそうですよね」
 え、とクリスの眉が上がる。
「俺も、クリス先輩にしますからっ」
 言いながら、沢村がクリスのベルトに手をかけた。
「俺はいい。沢村」
「やられっぱなしは、性に合いませんっ」
「いいから、沢村」
「いーや! よくありません」
 意地になっている沢村に、クリスは太い息を吐いた。
「わかった、わかったから沢村。手を離せ」
 じとっと疑いの目を向けてくる彼に苦笑し、クリスはベルトを外して前をくつろげ、隆々とした陰茎を取り出した。
「うおっ……で、でかい」
 目の前に現れたクリスの陰茎に、沢村は目を丸くした。
「やめておくか」
「やりますっ!」
 鼻息荒く宣言をした沢村は、がっしとクリスの陰茎をつかみ、口を大きく開いた。ひといきにかぶりつき、喉の奥を突かれてむせる。
「ぐっ、えほっ、げほっ」
「いきなり無茶をするからだ。沢村」
「いーえ! 俺は、ちゃんとやりとげて見せますよ」
 むせて涙目になった沢村に、クリスの胸と股間が疼く。沢村は、今度は慎重にクリスの陰茎の先を咥え、しゃぶった。
「んっ、ふっ、ふ……んんっ」
 口からはみ出ている部分は、手で擦る。彼なりに考え、懸命に奉仕する姿に、クリスの胸が熱くなった。
「沢村」
 クリスの大きな手が、沢村の髪をなでる。沢村は目を上げて、クリスの目がトロリと甘くなっているのを確認し、笑った。
 つたないながらもクリスを昂ぶらせようとする沢村に、クリスは欲を高めていく。
「沢村……もう、いい」
 息を乱すクリスに、彼の先走りと唾液で唇を濡らした沢村が、首を傾げた。
「なんでですか。気持ちよくないですか」
 ストレートな聞き方に、クリスは言葉に詰まった。
「俺、がんばりますから」
「……そうじゃない。沢村」
「じゃあ、なんなんすか」
「気持ちはいいんだ」
「なら、いいじゃないっすか」
 うれしげな沢村に、クリスは困ったように目を伏せた。
「このままでは、呑ませてしまうことになる」
 きょとんとした沢村だったが、すぐに理解し満面に笑みを広げた。
「いいじゃないすか。クリス先輩、さっき俺のを呑んでくれたでしょ。おあいこっすよ」
「っ、沢村」
 クリスが感じてくれていると知り、沢村は自信を持って奉仕を再開した。不器用で単調な動きだが、チラチラとクリスの様子を確認するため、上目遣いをしてくるのがたまらない。
「ふっ、んんっ、んぅうっ」
「沢村……もう、口を放せ」
「んぅっ、んふっ、んぅう」
 制止は、沢村をますます励ませる結果となった。必死に堪えていたクリスだが、彼もまだ思春期の盛り。抗いきれずに、欲を迸らせた。
「く、ぅ」
「ごふっ、げほっ、げはっ」
「っ! 沢村、すまない」
 吹き上げた精液に喉を打たれてむせる沢村に、クリスは慌てて謝罪する。胸を喘がせつつ口をぬぐった沢村は、飛び切りの笑みをクリスに向けた。
「なぁに言ってんすか、クリス先輩。俺の方こそ、きちんと呑めなくてスンマセンした」
 絶句し、硬直したクリスのことなどおかまいなしに、沢村は拳を握り決意を叫ぶ。
「よぉっし! 俺も、ちゃんとクリス先輩を呑めるよう、がんばって練習するぞー」
 目の前のことに真っ直ぐすぎる沢村に、クリスはあたたかみのある苦笑を漏らした。
「練習をしなきゃいけないのは、投球の方なんだがな」
「はっ!!」
 真っ赤になった沢村が、ぶんぶんと手を振りながら言葉を探し、直立したかと思うと深く頭を下げた。
「どっちもがんばりますんで、よろしくおねがいしまっす!」
 良くも悪くも真面目な沢村に、クリスはそっと息を吐いた。
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 うーんと悩む沢村に、彼のフォームを見ていた御幸一也は、歯を見せて意地悪く笑った。
「どうした、沢村」
「いや。なんか、ちょっと」
 自分の中で何かをつかもうとしているらしい沢村の肩に、御幸は腕を回した。
「足りない頭で色々と考えても、知恵熱が出るだけだぞ。お前は、体で覚えるタイプだからな」
「体で……」
 ふむと納得したらしい沢村が、間近にある御幸の目を見る。
「そんなら、それがつかめるまで相手してもらって、いっすかね」
「はぁ? まだやんのか。休むことも大切だって、クリスさんに言われただろ」
「そうなんすけど」
「体力が有り余ってんなら、俺がヌいてやろうか」
 からかいを声に含ませ、御幸が沢村の股間をつかんだ。
「うわ、ちょっと……」
「寮生活じゃ、処理もまともにできないだろうしな」
「御幸せんぱ……んんっ」
 肩に乗せていた手で沢村の顔を掴み、唇を塞ぐと共に股間をまさぐる。開いていた沢村の口内に舌を入れるなど造作も無く、御幸は口腔を舌でなぶり、片手で器用に陰茎を取り出して擦った。
「ふっ、んんっ、んふっ、ふ、んは」
 すぐに目を潤ませてほほを赤くする沢村に、御幸が微笑む。
「単純と言うか、素直というか」
「ふぁ」
「もう、こんなにして。よっぽど、溜まってんだな」
「ひぅっ、あ、違……溜まってなんか」
「こんなにビンビンにしといて、よく言うよ」
 短いキスと簡単な愛撫のみで、沢村の陰茎は完全に隆起してしまっていた。
「ボール、打てるんじゃねぇの」
 キシシと笑う御幸に、沢村はムッとした。
「溜まってるわけ、ねぇじゃんか。俺は、クリス先輩と……」
 言いかけて、ハッと言葉を止めた沢村に、御幸は剣呑に目を光らせた。
「クリスさんと、何だって?」
 御幸の声が、一段低くなっている。
「別に、なんでもねぇ」
「なんでもないのなら、言えるだろう。それと、敬語、忘れてんぞ」
「うるせぇな! アンタにゃ関係ねぇだろう」
「ほう……。そんな口をきくのか」
 す、と御幸の目が細められた。ぞくりと沢村の背が震える。まずいと思ったが、口から出た言葉はどうしようもない。
「どうせもう、体育館には誰も来ないだろうからな。じっくりと吐かせてやるか」
「何をすっ……んんっ」
 御幸の唇が、ふたたび沢村の口を捉えた。抗う間もなく舌を差し込まれ、上あごをなでられ舌を吸われ、沢村の下肢が快楽に震える。頭をがっちりとつかまれ、片手で陰茎の先をいじられ、逃れようと思えば両手も体も自由であるはずなのに、御幸の愛撫は沢村から抵抗を奪っていた。
「んっ、ふんぅうっ、んっ、んうう」
 御幸の指先に、とろりとしたものが触れる。沢村が先走りを零し震えているのを確認し、唇を離した。
「どうだ、沢村。クリスさんと何があったのか、話す気になったか」
「言う必要なんてねぇ」
 ぷいっと顔を背けた沢村に、御幸のこめかみがピクリと反応する。
「かわいくねぇな。――そっちがそうなら、遠慮なくさせてもらうぜ」
「へ? うわわっ」
 ベンチに沢村を横たえた御幸は、手早く彼のズボンを下着ごとずらし、下肢をむき出しにした。ズボンが足首にひっかかる。それを脱がさず足を持ち上げ、御幸はニンマリとした。
「体がやわらかいのは、スポーツマンとしては大切だよなぁ」
「おいっ、何をする気だ、御幸一也!」
「なんでフルネームなんだよ。ま、いいけど」
 わめく沢村をもろともせず、御幸は彼の足にひっかかるズボンを、沢村の頭に通した。
「ちょ、何だこの格好。恥ずかしいじゃないか」
「恥ずかしい格好をさせたんだから、当然だろう」
「この変態っ」
「クリスさんと何があったのか、言えば解放してやるよ」
「ぐ、ぅう」
 尻を天井に向ける格好で、沢村が呻く。くやしげな彼の尻に、御幸は楽しそうに顔を寄せた。
「さて、と。どこまでガマンできるかなぁ」
「ちょっと、何――っ」
 御幸が沢村の蜜嚢にかぶりつく。唇でやわやわと揉まれ、沢村は息を呑んだ。目の前に、自分の陰茎がある。その先に蜜嚢をしゃぶる御幸の不敵な笑みがあった。自分の昂ぶりを見せつけられ、沢村はわなないた。
「っは、やめろ……っ、あ、ぁ」
「自分のチ○ポが、どうなってっか見えてるだろう? とても、やめろって感じじゃないよなぁ。沢村」
「ううっ」
 悔しげに唇を噛む沢村に、御幸は唇を舐めた。
「そのガマン、どこまで続くかな」
「っは、ぁ、ああ」
 蜜嚢をしゃぶられ、陰茎の根元をくすぐられて、沢村は引き締めた唇を、あっけなく開いた。
「ほらほら、どうした沢村ぁ」
「ふっ、んぅうっ、ぁ、は、ふぅう」
「さっさと白状したら、イカせてやるぜ」
「こんなのにっ、屈す……はぁう」
 総身に力を込めて快楽に抵抗をする沢村だが、抗いきれるものではない。先走りをとめどなく溢れさせ、終わりを迎えられないことに涙を浮かべながら、けれどもクリスとのことは口にすまいと堪えている。そのいじらしさに、御幸の嗜虐がくすぐられた。
「そこまで抵抗するとはな。ますます、聞きたくなった」
「ふぇ」
 御幸が一旦離れる。沢村は、涙と落ちてきた自分の先走りで濡れた顔を、ごそごそと荷物をあさる御幸に向けた。
「いつも持ち歩いていて、正解だったな」
 戻ってきた御幸に、沢村は胸を喘がせながら視線で疑問を投げた。
「ワセリンだよ」
「俺、どっこも怪我なんてしてねぇよ」
 ぐしゅっと鼻を鳴らす沢村に、御幸はニンマリとした。
「あんまりメジャーじゃねぇけど、こういう使い方があるんだよ」
 たっぷりと指でワセリンをすくった御幸は、その指を沢村の尻の割れ目にひたりと当てた。
「ひっ……何?」
「こうするんだよ」
「うぁっ、あ……なんで、そんっ」
「さあ。なんでだろうなぁ」
「んぁあっ」
 御幸の指が沢村の秘孔に沈み、蠢く。触れられたことの無い箇所の刺激に、沢村は嘔吐をもよおした。が、御幸が秘孔をさぐってすぐに、それが消える。
「ぁ、ああっ」
 背骨を雷が走り抜けたような快感があった。
「どうだ、沢村。気持ちよくないか」
「なんっ、ぁ、ああっ」
 御幸が指を動かすたびに、快楽が頭の先まで突き抜ける。腰が疼いてたまらない。沢村が身を捩れば、彼の陰茎が震えて先走りをまきちらした。
「おいおい、あんま暴れるなよ。汚れちまうだろ」
「っは、ぁあ、無理ぃああ」
「仕方ねぇなぁ」
 責めているくせに、そんなことを言いながら、御幸は沢村の靴を片方脱がし、ズボンと下着を足から抜いた。足を下ろし、秘孔をさぐりながら陰茎に舌を伸ばす。
「ふはっ、は、ぁあ」
「最高に、気持ちよくさせてやるよ」
「ふひっ、は、ぁ、あ、み、ゆき、せんぱ、ぁあ」
 ワセリンを追加し、御幸は沢村の秘孔を広げつつ、彼の陰茎をしゃぶった。根元から先端まで舌でなぞり、蜜の出口を舌先でくすぐり、ぱくりと口内に包んで吸ったかと思うと、また舌先だけの刺激にもどす。
「ひふっ、ひっ、ひぅうっ」
「クリスさんと、何があった。沢村」
「んぅうっ、は、ぁあ、言わな、ぁあ」
「強情な奴だなぁ」
 呆れと楽しみを綯い交ぜにした御幸は、快楽でわけがわからなくなるよう、沢村を責め続けた。
「ひぅうんっ、ぁ、はぁああ、ふ、ふひぁああ」
 ぼろぼろと涙をこぼし、飲み込む余裕の無くなった唾液を垂らす沢村は、すっかり淫蕩におぼれているように見える。それなのに、クリスと何があったという御幸の問いには、答えない。
「そっちがそのつもりなら、こっちも容赦はしねぇぜ」
「ふぇっ」
 沢村の先走りで濡れた唇を舐め、御幸はズボンを下ろした。沢村の濡れた目に、怒張した御幸の陰茎が映る。
「でけぇけど、クリス先輩ほどじゃ、ない」
 ぽつりとこぼした沢村に、御幸のコメカミが軋んだ。
「なんで、お前がクリス先輩のチ○ポのデカさを知ってんだ?」
 ほほを引きつらせる御幸に、沢村はプイと顔を背けた。
「ああ、そうかい。いいぜ、たっぷりと体に聞いてやる」
 その意味のわからぬ沢村は、圧し掛かってきた御幸の不敵な笑みに、またたいた。秘孔の入り口に、熱く硬いものが当たる。そこではじめて、沢村は彼の意図を知った。
「ま、さか」
 二イッと御幸が唇をゆがめた。
「その、まさかだ」
 さぁっと沢村から血の気が引いた。
「無理っ、無理無理っ」
「だぁいじょうぶだって。――それとも、観念してクリスさんと何があったか白状するか」
 ぐっと沢村が口を引き結ぶ。
「そうこないとな」
 ここで白状されて、取り止めとなってしまえば、御幸の凝った欲の行き場が無くなる。御幸は沢村の強情さに少しの感謝と愛情を込めて、彼の鼻先に唇を寄せた。
「怖くねぇから」
「こっ、怖がってなんか……っ」
 御幸が埋まり、沢村は息を呑む。慎重に、沢村の具合を確かめながら腰を進める御幸の息が、熱い。耳朶に触れるそれを感じた沢村は、胸が熱くなるのを感じた。
「御幸せんぱ……っ」
「っ、何だよ、沢村」
「もしかして、俺に感じてんすか」
「うるせぇよ」
 御幸の唇が、沢村の声を塞ぐ。呼気の熱さに、沢村は彼が自分を相手に高ぶっていると確信をした。とたんに体中が熱くなり、神経が御幸に向いた。
「っは、ぁ、ああ」
「なんだ。急に、感度が上がったな」
 御幸が沢村の胸をまさぐった。尖りをつまみ転がせば、沢村が背を反らす。
「はんっ、ぁ、ああっ」
「いい反応だ」
「ひ、ぃああっ、ぁ、はぁあ」
 胸乳を指で転がしながら、御幸は腰を進めた。反抗的だった秘孔が、招く動きへと変わる。
「沢村、苦しくないか」
「ふぅ、ぁ、は、いっぱ、ぁあ、埋まって、くるしぃ、ぁ」
「痛みは、なさそうだな」
「ぁあうっ、ふぅうん」
 甘く高い声で返答をした沢村のほほにキスをして、御幸は全てを埋めた。
「は、ぁ。全部、俺が入ったことがわかるか、沢村」
 沢村は肯定とも否定ともつかぬ動きで、首を振った。苦笑した御幸が、沢村を抱きしめる。
「動くぞ」
「っあ、ぁあ」
 御幸の熱が、沢村の内側を擦る。ワセリンの助けの範囲だった動きは、御幸の先走りが足されたことで、激しさを持った。
「はんっ、は、はぁああっ、みゆっ、ぁ、御幸せん、ぱ、ぁあっ」
「沢村っ……クリスさんとシたのか」
 ぶんぶんと、沢村が首を振る。
「なら、俺が初めてか」
 今度はうなずき、沢村は御幸にしがみついた。
「はっ、はぁあっ、ぁ、いっぱ、ぁ、くるし……っ」
「苦しいだけか?」
「ふぁ、熱っ……て、きもちぃいあっ」
 ニヤリとした御幸が、腰の動きを早めた。
「んはぁ、あつっ、ぁ、あつぃああ」
 身悶え叫ぶ沢村の耳に、御幸は甘く激しい声を注ぐ。
「俺も、お前の熱で溶けそうだ」
「はぁあっ、ぁ、ああっ、も、くるっ、ぁ、イッちま、ぁあ」
「いいぜ、沢村。思い切り、ぶっ放しちまえ」
 御幸の陰茎が、沢村の快楽点を抉り破裂した。
「っ! あ、ぁあぁああああ――」
 折れそうなほどに仰け反り、声を限りに叫びながら、沢村も絶頂を迎える。痙攣しながら全てを吐き出し、ぐったりと弛緩した沢村から抜け出た御幸が、やれやれとタオルで汗を拭い、汗拭きシートを取り出して沢村の下肢を清めた。
「……御幸先輩」
「あ?」
 呼吸の整わぬまま、沢村は腕で体を支えて身を起こした。
「すっげぇ、気持ちよかったっす」
 そんなことを言われるとは思わず、御幸はあっけに取られた。
「それで、頼みがあるんすけど」
 沢村の真剣な様子に、御幸は眉根を寄せた。沢村はクリスに性欲を癒されたこと、お返しに彼を心地よくさせたいのにできかったことを話した。
「それで、その……教えてもらえたらなぁと、思ったんすけど」
 唇を尖らせ、もごもごと口ごもりつつ、沢村は御幸を上目で伺う。
「俺は体で覚えるタチだって言うから、その、なんつうか」
 真っ赤になって顔をそらした沢村のほほを両手で包み、御幸は顔を寄せて額を重ねた。
「俺とヤんのが、気持ちよすぎたから、もっとされたいって理由から、嘘をついてんじゃねぇだろうな」
「嘘じゃねぇよっ! ……そりゃあ、その、すっげぇ、気持ちよかったから、またしたいなとか思ったけど」
 白状した沢村に、御幸は笑いを弾けさせた
「何がおかしいっ!」
「悪い、悪い。いや、なんか、ちょっと思っていたのと違っていたからな。ま、いいや。――沢村。俺に教えを乞うんだから、ハンパなことはさせねぇぜ。覚悟はできてんだろうなぁ」
 ぱあっと、沢村の顔が明るくなった。
「おうよっ! ぜってぇ、クリス先輩を気持ちよくさせてやるぜ」
 興味深げに笑んだ御幸が、腕を組んで首を傾げた。
「ま、いっか」
 この日から、御幸と沢村の、野球とは別の特訓が始まった。
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 クリスはニコニコと、体育館のベンチに座っていた。御幸が「沢村の鍛錬の成果を見て欲しい」と誘い、沢村がやる気十分の顔で「よろしくおねがいしまっす」と言ったのを、どんな結果が見られるのかと楽しみにしている。
「それじゃあ、はじめますか」
 そう言った御幸は、普段着だ。沢村も普段着のままで、クリスは首を傾げた。
「着替えなくて、いいのか」
「大丈夫ですよ、クリスさん。このままで」
「……そう、なのか」
 御幸と沢村が楽しげに自信を漲らせているので、クリスはそれ以上を追及しないことにした。
「それじゃあ、沢村。はじめようか」
「はいっ!」
 元気よく返事をした沢村の手には、ワセリンがある。
「何をするつもりなんだ」
「まあまあ、クリスさん。そのまま、じっと座っててください」
 御幸がゆったりとくつろいだ様子で見守る中、鼻息荒くクリスに近付いた沢村は、突然クリスに頭突きのようなキスをかました。「っ?!」
 目を白黒させるクリスの頭をガッシとつかみ、驚き開いた彼の口内に舌を入れる。上あごをくすぐり歯列をなぞり、舌を吸われてやっと、クリスは衝撃から意識をもどした。
「んっ、ふ、沢村、御幸。これは、どういうことだ」
「どうもこうも無いですよ、クリスさん」
「俺、いっぱい練習したんで、安心してくださいっ!」
「安心って、何を……っ、沢村」
 勢いよくしゃがんだ沢村が、驚くほどの手際の良さでクリスの下肢をむき出しにし、足を持ち上げた。
「っ!」
 倒れそうになったクリスの背を、いつの間にか背後に移動していた御幸が支える。
「おっと。沢村、もっと丁寧に扱え」
「すんませんっした」
 謝罪の言葉は口にするものの、沢村は今からする行為に興奮をしており、意識が他に向いていない。
「やれやれ、まったく」
「御幸、これはどういうことだ」
 肩越しに御幸を見たクリスは、現状を把握しきれないでいた。
「ここまできても、まだ、わかんないんすか。クリスさん」
「いや……」
「今日こそ、すっげぇ気持ちよくさせちゃいますからね、クリス先輩!」
「沢村……っ」
 まだやわらかなクリスの陰茎に、沢村が唇を寄せる。やわやわと蜜嚢を揉みながら幹を唇で扱き、舌を絡める沢村の動きに、クリスは目を見張った。
「俺が仕込んだんですよ、クリスさん」
 クリスの耳に、御幸の舌が差し込まれる。ぞくりと震えたクリスは、問いを口にする前に御幸に答えをささやかれた。
「沢村の奴、クリスさんを気持ちよくさせたいって、俺に教えてくれって言ってきたんですよ」
「御幸、それでおま……んっ、ふ」
 御幸の唇が、クリスの唇を覆う。舌を絡めとられたクリスは、御幸の瞳に淫靡な光りがあるのを見つけた。
「沢村を、この唇で慰めたらしいっすね」
「御幸」
「アンタが、そんなことができる人だとは、思いませんでしたよ」
 切なさをひそませた淫猥な声に、クリスの胸は絞られた。
「御幸、俺は……っ」
 下肢の刺激に、クリスは息を呑んだ。沢村がクリスの蜜口を丹念に愛撫している。
「クリス先輩、どうっすか」
「どうって……沢村」
 返事に窮するクリスの横で、御幸が答える。
「大丈夫だ、沢村。クリス先輩は、ちゃんと感じているぞ。でなきゃ、チ○ポをそんなに、デッカくしないだろ。それに、俺がしっかりサポートしてやるから、安心しな」
「うっす! こんなにデカく硬くしてんだから、気持ちいいんすよね、クリス先輩」
 子どものように歯を見せて笑う沢村と、怒張した自分の下肢との落差に、クリスはめまいを覚えた。
「ほら、手も口も休んでんぞ。体育館を使える時間は決まってんだから、しっかり励めよ。沢村」
「わあってるよ。いちいち、指図すんな」
 ぷっとほほを膨らませた沢村が、ワセリンを手に取る。御幸が肩でクリスの体を支え、手を伸ばして彼の胸乳をまさぐった。
「やっぱ、いい筋肉してますね。クリスさん」
「御幸」
 クリスの目が潤み、声が掠れている。
「その顔と声、たまんねぇっす」
 御幸がクリスの首筋に、痕が残らない程度に歯を立てた。
「う……」
「ああー! そっちばっか感じてないで、俺も感じてくださいよ、クリス先輩」
「そう言うんなら、さっさと気持よくさせればいいだろう、沢村」
「うるせぇよ、御幸一也」
「だから、なんでフルネームなんだ」
 自分が何をされるのかを察しつつ、状況に思考がついていかないクリスは、されるがままになっていた。沢村は気合を入れてクリスの足を持ち上げ、ワセリンをたっぷり掬った指を、そろそろと双丘の谷にある小さな孔へと押し込んだ。
「っ……う」
「痛く、ないっすか?」
「沢村ぁ。そういうのは、聞かずに自分で確かめろ」
「うっす!」
 指を秘孔に入れた沢村は、クリスの蜜嚢を吸いながら陰茎を扱く。
「っは、んん」
「声、抑えずに聞かせてやってくださいよ。クリスさん」
「御幸、ぁ」
 御幸の指が、シャツの上からクリスの胸の尖りをいじる。
「喘ぎ声も、奥ゆかしいんですね。沢村とは大違いだ」
「ふっ」
 御幸の唇がクリスの耳を、首を、唇を愛撫する。御幸に上半身を、沢村に下半身をほぐされ快楽を引き出されるクリスは、肌身を粟立たせ小さく震えた。
「は、ぁ、も、もう……っ」
「沢村ぁ。まだ、クリス先輩を昇らせきれてねぇぞ」
「うるせぇな! わぁってるよ。――クリス先輩、ビンビンの先っぽから汁が出てるし、ちょっとは感じてくれてるんすよね」
「っ、あ、沢村」
「俺、がんばるんで!」
「ひっ、ぁあっ」
 沢村の指が、クリスの秘孔の弱い部分を見つけた。そこを責めれば、クリスの陰茎が震えて先走りを迸らせる。嬉しげにほほを紅潮させた沢村は、見つけた場所を重点的に探りながら、クリスの陰茎をしゃぶった。
「んふっ、んっ、は、すごい、クリス先輩……いっぱい出てくる」
「あっ、は、ぁあ、沢村っ、ふ、んぅう」
 背を丸めて堪えようとするクリスの胸をまさぐりながら、御幸が甘くささやく。
「素直に快楽を受け止めてくださいよ、クリスさん。堪えきれるもんじゃ、ないでしょう」
「ふっ、んぅううっ、く、ぁ、御幸っ」
 息を乱し、全身を強張らせて快楽を押さえ込もうとするクリスを、沢村と御幸が責め続けた。
「下手にガマンすると、逆にクセになっちゃいますよ」
「んふっ、んじゅっ、クリス先輩、すっげぇ熱くなって……はむっ」
「ぁ、はぅうっ、んっ、だめだっ、ぁ、沢村っ、だめ……っは、ぁあああっ!」
 堪えきれなくなったクリスが、沢村の口内に精液をぶちまける。仰け反った背を支える御幸が、絶頂を迎えたクリスの唇を舐めた。
「んぐっ、ぐ、ん、んぅう〜」
 噴き上がったもので喉を突かれぬよう、舌で阻止した沢村が、陰茎を吸い上げ苦労して呑みこむ。
「ぷはっ、はぁ……やっと、俺もクリス先輩のを、呑めましたよ」
 ニカリと歯を見せた沢村に、クリスは潤んだ目を向け、うっすらと笑みを浮かべた。
「まったく、お前というやつは」
「おっと。クリスさん。まだ、終わりじゃないですよ」
 御幸が、クリスをベンチに寝かせた。射精後の気だるさの抜けぬまま、クリスは疑問を浮かべて御幸を見る。
「もっと、心地よくなりますから」
 ぬっと、クリスと御幸の間に、沢村が顔を突き出す。
「まかせてください! 身を持って練習したんで。ぜったい、気持ちいいはずです」
「沢村……何を」
「いーから、いーから。クリス先輩は、そのまま横になっていてくださいって」
 よいしょと沢村がクリスの足を抱え上げる。下肢に硬いものが触れて、クリスはほほを引きつらせた。
「さ、沢村……まさか」
「だぁいじょうぶですって! しっかり、ほぐれてますから」
「いや、そういう問だ……っ――――」
 声にならない声を上げ、クリスがアゴを反らす。大きく開いたクリスの口に、御幸が指を入れた。
「ほらほら、沢村ぁ。クリスさんが、息を詰めているだろ。もっと、丁寧に」
「わかってるから、いちいち指図すんな御幸一也っ! ――クリス先輩んナカ、すっげぇあったかくて、気持ちいいです」
「がっ、は……」
「お前が気持ちよくなって、どうする。クリスさんを、気持ちよくさせたいんだろ」
「うっせぇな、これからだって」
 御幸に牙を向き、沢村は腰を動かした。クリスの秘孔を沢村の陰茎が開き、圧迫感に詰まる喉を、御幸の指が慰める。
「はっ、はふっ、ん、ふ、ぅうっ」
「はっ、はぁ、クリス先輩」
 うっとりと快楽を滲ませる沢村と、息苦しさに眉根を寄せるクリスの姿に、御幸は深々と息を吐いた。
「ったく。ぜんぜん、なってねぇな、沢村」
「ふっ、だって……俺、突っ込むのは初めてで、こんな、気持ちいいなんて、知らなかったし」
「言い訳はいい。――クリスさん。俺が、アンタをもっと気持ちよくさせてあげますよ」
「は、ぁ、御幸」
 ニッコリとした御幸は、クリスと沢村に唇を押し当て、足元へ回った。ワセリンを手にし、沢村の尻を開く。
「ひっ、ぃうあぁっ」
「まったく。世話の焼ける」
「くっ、うぁあっ、ひっ、ひぅう」
 秘孔を探られた沢村が身悶え、クリスの肉壁が抉られる。
「は、ぁあっ、沢村っ、ぁ、そんっ、動くな……ぁ」
「は、ぁあ、無理ぃあ、クリスせんぱ、ぁ、御幸せん、ぱぁあ」
 何に対しても素直な沢村が、下肢の前後の刺激に身悶え涙をこぼす。くねる沢村の陰茎の動きに、クリスの秘孔は翻弄された。
「ふ、くぁあっ」
「ほら、沢村。クリスさんも感じているみたいだぞ」
「ふぇ、あ、ああっ、クリス先輩、っは、ぁあ、俺も、すげ、きもちぃ……っす」
 乱れる二人に目を細め、御幸はほぐれた沢村の尻をつかんで広げた。
「クリスさん、沢村……もっと、気持ちよくなろうか」
「ぇ……あはぁああああっ」
 御幸が沢村に埋まる。仰け反る沢村に深く突き上げられて、クリスも背を反らした。
「ぁ、ああっ……ふ、深いっ、沢村、ぁあ」
「ひぅうっ、クリスせんぱぁああっ、は、すご、締めつけ、ぁ、はあぁあ」
「沢村。感じてねぇで、クリスさんを気持ちよくさせたいんだろ」
「はふぅううっ、ぁ、御幸せんっ、ぁ、はぁあ」
 御幸の動きに合わせて沢村が身悶え、クリスを責める。御幸は間接的にクリスを責める興奮に、胸を熱くさせた。
「クリスさん……アンタがそんなふうに乱れる姿を見る日が来るなんて、夢にも思いませんでしたよ」
「ふ、ぁあっ、み、ゆきぃ、ぁあ、も、もぉ、は、ぁああっ」
「最高に、そそられます」
「ひぃいいっ」
 御幸が激しく沢村を責める。淫蕩の恍惚を浮かべた沢村が、欲に促されるままにクリスを穿ち御幸を求めた。
「は、ぁああっ、きもちぃ、ぁあ、すごぉあぁあ、とけるっ、ぁ、ああっ、あつぃいぃい」
「沢村っ、ぁ、ああっ、ふ、御幸ぃ、ん、は、ぁああっ」
「クリスさん――沢村は、気持ちいいですか? クリスさんを気持良くさせたい一身で、コイツはセッ○スを覚えたんですよ」
 快楽に呼気を乱しつつ、冷静さを保とうとする御幸と、必死に快楽を貪る沢村の乱れた姿に、クリスの脳が揺さ振られた。
「ああ、すごく……っ、気持ちがいい、沢村……御幸っ、は、ぁあっ」
「んぁあっ、クリス先輩っ、俺、俺、もうっ」
 沢村がクリスの首にむしゃぶりつく。ちらりと御幸がクリスを伺うように見た。クリスは快楽にうわずった顔で微笑み、うなずく。
「よし。それじゃあ、ラストスパートだ」
 御幸が沢村の肉壁を抉るようにかき回した。
「ぁひぃいいいっ、すごぉ、ぁあ、も、ぁ、ぐちゃぐちゃ、ぁあ、は、しんじゃう、俺っ、しんじまぅううううっ」
 雄たけびを上げて、沢村が絶頂を迎える。
「ふっ、あ、はぁああああ――――っ!」
 噴き上がった沢村の熱に押され、クリスも弾けた。
「くっ、ぅあぁあっ!」
 沢村の秘孔が締まり、御幸も解放を味わった。
「はっ、……くぅ」
 それぞれが余韻に身を震わせ、うっとりと弛緩する。御幸が沢村から抜けると、沢村はクリスの胸にくったりと倒れこんだ。荒くあえいでいるクリスの上下する胸に合わせ、沢村が揺れる。
「あ。おい、沢村。せめて抜いてから気を失え」
「仕方がないさ」
 文句を言う御幸を制し、クリスは慈しみの瞳で沢村の髪をなでた。御幸が鋭く鼻を鳴らす。
「御幸」
 クリスが手招くままに、御幸は彼の傍らに膝を着いた。
「とんでもないことを、教えてくれたな」
 ニィッと御幸が歯を見せる。
「そして、とんでもないことを思いつく」
 無言で笑みを深めた御幸の頭を、クリスは引き寄せた。沢村の頭と重ねるように胸に抱き、クリスは「まったく」と呟いた。満足そうな顔で意識を失っている沢村と、クリスの優しい吐息に、御幸は胸をくすぐられ息を漏らして目を閉じた。
 三人の体温が、それぞれの間を巡り、心音を一つにする。